いい車。(スズキ フロンクス試乗)

スズキ フロンクスの試乗を行った。

試乗したモデルは、2024年10月に発売されたモデルだ。

試乗した個体について

  • 初度登録 2026年1月
  • 走行距離 6920km
  • グレード 2WD
  • タイヤ:グッドイヤー アシュアランス トリプルマックス2(空気圧は既定値)

はじめに:インドの売れっ子

フロンクスの生産は、インドのマルチ・スズキで行われる。インドでは最速で10万台のセールスを記録した「売れっ子」だ。

かつて、自動車評論家 笹目二朗氏は「道路の舗装状態のよくない国の車は足回りの剛性が高い」そして「それは日本で乗ってもメリットとなる」と言っていた。実際、フロンクスに乗るとシャシーや足回りの剛性感が高く、そのことが全体の好印象につながっており、走り出してすぐに「良さそう」なことに気づく。

「良い車は一つ目の段差を乗り越えたときにわかる」、そう言っていたのは誰だったか。残念ながら思い出せないが、フロンクスはそういう類の車だ。

高速道路:乗り心地よし。パワーはない

SUVルックにしたことで、フロンクスはサスペンションの有効ストロークが長いと考えられる。そこに、エアボリュームの大きいタイヤ(195/60R16)と、アンコの詰まったシートが合わさり、「ちゃんと褒めないとな」と思わせる乗り心地を実現していた。

操舵面でおかしなところはなく、本線をまっすぐ走ることも、導入路を狙い通りに曲がることも難しくない。SUVとしては背が高くない(1550mm)し、幅が広め(1765mm)なこともあって、横風への弱さも感じられなかった。

1.5L 直4エンジンは今日の基準でいうと物足りなく感じるかもしれない。最高出力101ps/6000rpm、最大トルク13.8kg・m/4400rpmというスペックからもわかるように速くはないが、追い越しの際は6速ATをMモードにして、パドルシフトで3速か4速までシフトダウンすれば遅すぎることはない。

車内はうるさくはないが、風切り音とロードノイズは静かなほうではない(タイヤはグッドイヤー アシュアランス トリプルマックス2)。いつもの場所で測った車内の音圧は約69dBだった。

山坂道:いきいきと走る。退屈しない

SUV風の見た目なので大きく見えるフロンクスだが、サイズはスイフトに近く、全長は4m未満、車重は1070kgしかない。

山坂道では、この軽さ、短さ、トレッドの広さ、正確なステアリング、剛性感が高くストロークも十分なサスペンション、6速ATとパドルシフト、低速からの加速をアシストするマイルドハイブリッドが作用し、いきいきと走る。

操舵は正確で怖い動きはしない。アンダーステアはそれほど強くなく、カーブを曲がりながらブレーキを踏むとノーズが素直に内側を向く。運転が好きな人が退屈しなくて済む味付けだと思った。

気になったこと:ADASが古臭い

今回の試乗で気になったのは一つ。残念ながら、ADASの挙動が古臭い。

「君、遠く見てないでしょ」という動きで、操舵も加減速もぎこちない。実用には耐えるが、期待するとガッカリするかもしれない。

先日試乗したアクアの「Toyota Safety Sense」と比べると明らかに世代が違う感覚で、やや古い記憶だが、2020年発売のフィット(初期型)の「Honda SENSING」と比べても運転がうまくなさそうだ。

結論:燃費もよくいい車

フロンクスのFFモデルは税抜きで250万くらい。装備が充実していてコスパがいいという声が多く、実際そのとおりだと思う。

燃費もよかった。236km走ったうち165.2kmで燃費を計測。高速道路と山坂道含む一般道が半々程度で約20.1km/Lを記録した。軽量化の大切さとマイルドハイブリッドの威力を思い知らされる。

もし、インド生産であることを気にしている人がいるなら、生産国よりも工場の新しさが重要だという考え方があることをお伝えしたい。フロンクスはスズキで最も新しい、2017年創業の最新鋭工場「グジャラート工場」で行われており、一定の品質が担保されているとも考えられる。

私は乗ってすぐ「プジョーっぽい」と思ったが、考えてみると、プジョーは伝統的にアフリカでのセールスが大きい。プジョーはサスペンションの剛性が高く、ストロークも長い傾向があるのだが、こうした設計はアフリカでの実用性を確保する意味もあったのかもしれないと考えた。

例えば、ディーラーでフロンクスの試乗車に乗って、道路に出ようと段差を乗り越えたとき「あ、なんかいいな」と思えたなら、たぶんあなたはこの車を気に入るだろう。楽しい試乗だった。